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CDBS型キャッシュレス&デジタル給付社会制度の詳細設計

UWEZに統合しました

年間必要財源の試算と内訳

CDBS(Centralized Digital Basic Society)構想に基づき、提示された条件下での主要歳出項目と必要財源を試算すると以下の通りです。

項目年間見込額 (兆円)内容・補足
歳入 (税収)

決済税 (税率10%)約100**国内決済総額1000兆円×10%**で算出 。現行の国・地方租税総額(60~70兆円)を上回る規模 。
その他税収・財源約0全税目を決済税に一本化する前提。ただし不足時は他財源(例: 資産課税強化)も検討 。
歳出 (主要支出)

ベーシックインカム(BI)約144全国民に年間120万円(一人月10万円)の給付 。現行の年金・生活保護・児童手当等給付(計約50兆円)の廃止・振替で一部財源充当可能 (純増分は約94兆円規模)。
医療・介護約30標準医療の完全無償化に伴う費用。AI活用などで現行44兆円から約28兆円へ効率化目標 。社会保険料と患者負担を廃止し、公費負担に一本化。
教育約7**教育無償化(大学まで)**による追加負担数兆円 。一方、デジタル教材・学校統合で1~2兆円のコスト削減を見込み、2030年時点で概ね収支均衡 。
防衛約8防衛費。現状5~8兆円規模で増加傾向(2023年度6.8兆円→2024年度7.9兆円) 。GDP比2%目標では将来約10兆円に達する可能性。
社会インフラ約20公共インフラ投資(交通・通信等基盤整備)。国と地方合わせ年20兆円超 。地方分散の無駄を排し国家戦略で優先度付けすることで、長期的に数兆円の圧縮余地 。
行政コスト約15行政運営費(中央政府および地方出先機関の人件費・IT投資等)。行政集約とAI導入で年間5兆円以上のコスト圧縮を見込む 。例:地方公務員を20%(約50万人)削減で人件費2.5兆円削減 、年金機構等の事務コスト削減で1兆円超など 。

上表の通り、最大の支出項目はベーシックインカム(BI)で約144兆円にのぼります。ただし現行の年金給付(約55兆円)や生活保護(約4兆円)・児童手当(約2兆円)等がBIに統合されるため、それらの財源を充当すれば実質的な純増分は約94兆円程度に抑えられます 。医療費は標準医療の無償提供により公費負担が増えますが、AI技術の活用や予防重視への転換で現在の44兆円から約28~30兆円への抑制を目指します 。教育無償化も一時的に数兆円の追加費用が生じるものの、デジタル化と学校統廃合による効率化で2030年頃には増減ほぼゼロに持ち込む計画です 。防衛やインフラ維持にもそれぞれ毎年数~十兆円規模の支出が必要ですが、これらは現行水準を基準に概算しています。行政コストは地方自治の統廃合とAI導入で大幅削減し、浮いた財源を他分野に振り向ける方針です 。

決済税収の想定(1000兆円×10%)

歳入面では、現金・電子マネーを含む国内あらゆる決済総額を年間1000兆円と仮定し、その10%を課税する「決済税」を導入します。これは中央銀行デジタル通貨(CBDC)基盤で全取引にリアルタイム課税する想定で、税率10%で年間約100兆円の税収となります 。この規模は現在の国・地方の租税収入合計(社会保険料除く)60~70兆円を大きく上回り、従来より潤沢な財源を確保できます 。課税ベースが広範(最終消費だけでなく企業間取引や資産取引まで含む)であるため、比較的低い税率でも十分な税収が得られる点が特徴です 。例えば、消費税のように最終消費に限定した場合、全ての税を置き換えるには税率50~70%が必要との試算もありますが 、決済税では取引総額ベースがGDPの2倍以上に拡大するため10%程度でも成り立つと見込まれます。なおCBDCを用いた自動徴税により徴税コストは極小化され、滞納や所得隠しも原理的になくなります 。このため100兆円の税収はそのまま政府歳入として充当可能であり、安定性・確実性も高い財源となります 。

税収と歳出の収支バランス分析

上記の決済税収(約100兆円)と主要歳出を対比すると、支出総額はBI給付の規模によって大きく変動します。今回のケース(全国民に年120万円給付)ではBIだけで144兆円(純増約94兆円)と巨額になるため、医療・教育・防衛等ほかの支出を合わせると歳出が歳入を上回る可能性が高くなります。大まかな試算では、歳出合計は年間およそ170兆円前後(BI純増分94兆+その他)となり、10%決済税の税収100兆円では数十兆円規模の不足が生じる計算です。実際、justice.salonの試算でも年100万円(一人当たり)支給のシナリオで決済税収80~100兆円に対し収支概ね均衡することが示されましたが 、年120万円支給(144兆円規模)ではさらに約24兆円の支出増となるため、そのままでは赤字幅が拡大します 。

もっとも、上記の歳出試算には現行制度からの振替分やコスト削減効果を織り込んでいない部分があります。例えばBIの144兆円には現行年金給付等の既存財源約50兆円が含まれ、これらは元々政府支出(または社会保険給付)として計上されていたものです 。同様に、医療費28~30兆円も現行では公費・保険料・患者負担に分散していたものを一本化しただけで、制度全体として新たに増える支出とは言えません 。さらに地方教育費や地方公共事業費も中央集権化に伴い国の歳出に計上されていますが、これも従来は地方財源等で負担していた部分です。したがって国全体(統合政府)として見れば「新規に追加で必要となる純財源」は試算上の総額より小さく、ある程度は現在の歳出の付け替えに過ぎない面があります。その点を考慮すると、10%の決済税収(100兆円)でも 「現行レベルの行政サービス+最低限所得保障」を概ね賄える可能性が示唆されます 。実際justice.salonでは、行政効率化による他分野歳出の削減(年間▲10~15兆円)とBI等新規給付の増加(+数兆円)を相殺し、BI導入後も財政を決済税収の範囲内に収めるシナリオを提示しています 。しかしながら、年120万円の高水準BIまで含めると収支はやや厳しく、追加策なしでは**赤字(財政不足)**が残る見通しです。

制度の持続可能性評価と過不足への対応策

CDBS型社会制度を持続可能に運営するためには、歳入と歳出のバランス調整が不可欠です。上記の分析から、決済税10%だけでは若干の財源不足が生じ得るため、以下のような対応策で過不足を是正します。

  • 決済税率の調整: 税率を僅かに引き上げることで税収を増やす案があります。例えば**税率12%**にすれば年間120兆円、15%なら150兆円の税収となり、不足を補える可能性があります 。もっとも15%では家計・企業の負担が重くなりすぎ経済活動を阻害しかねないため慎重な判断が必要です 。税率設定は必要財源を賄えるギリギリの低率に抑えることが望ましく 、景気への影響も踏まえ10~12%台での着地を検討します。
  • 給付水準の見直し(BI額の調整): BI支給額を調整することで支出総額をコントロールします。例えば年60万円(月5万円)なら総額約72兆円、年80万円(月約6.7万円)なら約96兆円と、大幅に負担が軽減されます 。逆に高額な給付ほど財源負担が急増するため、給付額は財政と両立する範囲で設定すべきです。試算では現行の社会保障給付と控除の範囲内(=年60~100万円程度)なら大幅増税なしでも実現可能との分析もあります 。制度設計段階で支給額と税率のバランスを綿密にシミュレーションし、持続可能な水準に調整します。
  • 給付対象の絞り込み: 本提案は「全国民一律給付」ですが、持続性確保のため給付対象を限定する選択肢も考えられます。例えば18歳以上の成人のみに給付すれば対象人口が約1億人に減り、年100万円給付でも総額100兆円に圧縮されます (子ども分は教育・育児支援策で別途対応)。ただし子どもを含めた一律給付には将来世代への投資や少子化対策の意義もあるため、給付範囲の縮小は社会的影響とのトレードオフになります。
  • 他の税財源の組み合わせ: 決済税を基本としつつ、不足分は富裕層への資産課税強化や炭素税など目的税で補完する戦略も考えられます 。justice.salon提案でも富裕層課税の強化や歳出構造改革と組み合わせて財源を確保するとしています 。具体的には大規模な金融資産を持つ富裕層への課税や、高額相続税の導入、法人税の最低税率確保などで追加収入を図ります。これらは所得再分配強化にも繋がり、BI主体の体制で不足する部分を補填できます。
  • 歳出の一層の効率化: 将来的な技術進展に伴い、行政・公共サービスの更なる効率化で支出を減らす余地も追求します。AIやデジタル化により行政事務の自動化・最適化を進め、人件費や運営費を継続的に削減します 。医療・介護もロボットや在宅ケアの活用でコスト低減を図り、インフラ維持管理もIoT/AIで予防保全して無駄な補修を省くなど、将来的な歳出カーブを抑制します 。こうした効率化努力によって生じた財源の一部を不足補填や国債残高削減に回し、財政の持続性を高めていきます。

以上の対策を組み合わせることで、収支バランスの黒字化あるいは均衡維持を図ります。特に重要なのは、中長期的に経済成長や技術進歩に応じて制度を微調整し、財政に無理のない範囲で給付水準や税率を運用するガバナンスです。justice.salonの結論でも、本構想が**「収支バランス上、決して実現不可能な空論ではない」とされたように 、適切な設計と調整次第で持続可能な制度になり得ます。ただし前提条件の変化(高齢化進行や景気低迷など)には柔軟に対応し、必要なら制度の一部修正(増減税や給付見直し)を行うフィードバック機能**を持たせることが肝要です。

医療分野における新制度の詳細(AI診療・自動トリアージ・電子処方)

*CDBS構想における**AIスマホ診療(左)と標準医療無償化(右)*のイメージ

医療制度はCDBS構想の中核的要素の一つであり、デジタル技術とAIを最大限活用して現行制度を刷新します 。「AI医療スマホ診療」を患者の最初の窓口(一次受診)に据え、必要に応じて医師の対面診療、さらに電子処方箋による薬局連携へと繋ぐ三段階の医療フローを構築します 。具体的には、患者はスマートフォンの医療AIアプリで症状や質問に答えると、AIがそれを問診・スクリーニングして適切な診療科や緊急度を自動判定します 。その結果、受診が必要と判断された場合のみ医療機関での対面診療に誘導され、診断確定後は処方箋情報が電子送信で薬局へ共有されます 。この一連のプロセスを全国民共通のデジタル基盤上で実現し、個人の健康データやAI診断結果を一元管理して医療機関・薬局とリアルタイム連携させることで、無駄のないスムーズな医療提供を目指します 。新制度の核となる考え方は、「ベーシック医療(基本的な必要医療)の完全無償化」です 。現行の公的医療保険制度は廃止し、標準的な診療や救急医療は全て新たな公費(決済税収など)で賄います 。これにより誰もが経済的心配なく必要な医療サービスを受けられる社会を実現します 。

▶ 無償化される標準医療の範囲: 国民皆保険で現在カバーされている範囲の医療サービスは原則すべて無料提供とし、具体的には次のような領域が対象となります 。

  • 急性期医療・救急: 急病や事故による救急搬送・救命治療は全額公費負担。例として心筋梗塞や脳卒中などの緊急処置、救急車の利用も無料にします 。
  • 慢性疾患の診療: 高血圧・糖尿病など生活習慣病を含む慢性疾患の外来診察や治療薬も自己負担なしで継続可能にし、病状悪化の防止と継続治療を支援します 。
  • 予防医療(ヘルスプロモーション): 定期健診、各種がん検診、予防接種など将来の病気予防につながる医療行為も全て無償提供します 。早期発見と予防により重篤な疾病を減らし、結果的に医療費の抑制につなげます。
  • 一般診療・初期医療: かぜ症状など軽度疾患の診察、一般外来での検査・治療も公費でカバーします 。患者はまずAI問診で振り分けられ、必要な場合に医療機関で無料診療を受ける流れです(軽症で受診不要とAIが判断した場合はセルフケア指導のみ行います)。
  • 出産・小児医療: 分娩費用や小児科診療も含め、子どもから高齢者まで標準的医療ニーズは原則無料とします (※現行では正常分娩は保険適用外だが、新制度では出産一時金の代わりに完全無償化を検討 )。

※高度先進医療(最先端の高額医療)や美容整形など医学的必要性の低いサービスは無償対象外とし、自由診療として利用者負担または民間保険で対応します 。無償化はあくまで「標準的で必要十分な医療」のみに限定し、過度な濫用や財源圧迫を防ぎます。

▶ AI問診・自動トリアージュ: 患者の症状をAIが事前に評価する**「AIスマホ問診」は、新時代の医療の玄関口です。国内で実用化されつつある症状チェックAI(例:「Ubie」など)は、数十の質問に答えるだけで可能性のある疾患や適切な診療科を提示できる水準に達しており、月間300万人以上が利用する実績もあります 。AI問診のメリットは患者の不安を和らげ適切な医療行動を促す点にあり 、また医療資源の最適配分にも寄与します。AIは最新の機械学習によって症状データの蓄積から診断精度を日々向上させており、例えばスマホ録音した咳音から結核を識別**したり、皮膚画像からアトピー性皮膚炎の重症度を判定するモデルも研究されています 。こうした多角的な解析により今後ますますAI診断能力は向上していくでしょう 。

AIによる自動スクリーニングを通じて、軽症患者までが大病院に押し寄せる現状を改め、真に受診が必要な患者だけが医療機関に足を運ぶ仕組みを作ります 。日本では患者一人当たりの年間受診回数が約13回とOECD平均(約6回)の2倍以上と言われ「とりあえず病院」の傾向が強いですが 、無料化によるモラルハザードを防ぐためにもAIによる受診必要度の客観評価(トリアージュ)が重要です 。AI問診は24時間365日待ち時間ゼロで稼働するため、夜間や休日でもまずAIが相談に乗り、緊急性ありと判断すれば救急搬送を指示し、緊急でなければセルフケアの提案や翌日の受診予約につなげます 。このようにAIトリアージュを徹底することで、不必要な夜間救急や平日日中の外来混雑を緩和できます 。さらにAI問診で収集した症状データはそのまま電子カルテに自動入力・共有されるため、医師のカルテ記載負担が大幅に短縮されます 。ある実証では音声入力やAI問診の導入でカルテ記録時間が50%削減、予約管理業務も40%減ったとの報告があり 、こうした効率化によって医療従事者の負担軽減と空いた時間の患者対応への振り向けが可能になります 。AIによる事前問診と自動トリアージュは、医師が重症患者の治療に専念できる環境を整え、結果として医療の質と効率を両立させる柱となるでしょう 。

▶ 電子処方箋とデジタル連携: 患者が医師の診断を受けた後は、処方箋情報がオンラインで即時に薬局へ送信されます 。患者は処方箋紙を持ち歩く必要がなく、最寄りの薬局で薬を受け取るだけです。電子処方箋の標準化により重複投薬の防止や、全国規模での在庫管理効率化が進みます 。さらにジェネリック医薬品の積極活用も図り、薬剤費の抑制にもつなげます 。このように診療~調剤までデータ連携することで、患者の待ち時間短縮や服薬情報の一元管理も実現し、安全性と利便性が向上します。

▶ 医療費の適正化と財政: 新医療制度の導入により、従来は年間44兆円超にのぼっていた日本の医療費を約28兆円まで削減・最適化することを目標としています 。これは現在から36%もの大幅削減に相当しますが、AI導入と制度改革による無駄の徹底排除で実現可能と見込まれています 。主なコスト削減策は次の通りです。

  • 適正受診の推進: AI問診や遠隔診療の普及により、不必要な対面受診や過剰な重複診療を減らし医療資源の浪費を防ぎます 。患者の総受診回数を削減することで薬剤や検査の過剰処方も抑制され、数兆円規模のコスト減が期待できます 。実際、AIによる受診ガイドで医療費の5~10%削減も可能との試算もあります 。
  • 予防と早期治療の徹底: 無償の健診・予防接種の推進とAIによる疾病予測・早期発見により、将来の重症化患者の発生を減らします 。重症化すれば莫大な治療費がかかる疾患でも、初期対応で費用を抑えられます。予防重視で長期的な医療費の増加カーブを鈍化させ、財政負担の膨張を防ぎます。
  • 医療DXによる業務効率化: 医療現場のデジタルトランスフォーメーションで省力化を進め、ムダなコストを削減します。 例えばAI問診導入によって1医療機関あたり年間1000時間の問診時間削減例もあり 、全国で見れば人件費節減効果は莫大です。加えて、AIによるビッグデータ解析で費用対効果の低い治療を見直したり、医療ガイドラインを改善することで、医療の質を落とさず費用だけ減らす最適化を図ります 。
  • 社会保険関連コストの削減: 公的医療保険制度の廃止により、保険者の運営費やレセプト審査費などの間接コストも大幅カットします 。現在、診療報酬明細書(レセプト)の審査には1件あたり約45円の経費がかかり、年間数十億件のレセプト処理に膨大なコストが費やされています 。これを簡素化・削減することで数千億円規模の行政コスト減が可能です 。さらに、医療機関側でもレセプト請求や保険請求の事務負担が無くなるため、その人件費も削減されます 。こうした間接経費をすべて医療現場に再投入できれば、実質的な医療提供効率は飛躍的に高まります。

以上の取り組みにより、提供する医療の内容は充実させつつ費用は大幅圧縮することが可能になります 。例えば高齢者でも遠慮なく早期受診できるため重症化が減り、結果的に国民の健康水準も向上します。もちろん、医療費の財源は全額を税方式で賄うため、社会保険料や患者負担が消える分だけ財源不足が生じますが、これは新たな「決済税」で補填します 。具体的には、経済全体の取引にごく薄く広く課税する決済税のうち約1%分(例えば10%の決済税収の中の約十数兆円規模)を医療費財源に充当するイメージです 。日々のあらゆる取引ごとに社会全体で少しずつ負担し合うことで、「いつでもどこでも無料で医療を受けられる安心」を支える仕組みとなります 。このようにして現役世代の保険料負担や高齢者の窓口負担をなくしつつ、社会全体で医療を支える安定財源を確保します 。

教育・インフラ・防衛などその他主要分野の制度設計と予算

最後に、医療以外の主要分野(教育、インフラ、防衛、行政)におけるCDBS型社会制度の設計方針と、想定される予算配分について解説します。

教育分野の設計と予算(大学まで教育無償化)

  • 高等教育までの無償化: 幼児教育から大学まで、あらゆる教育を原則無償(または極低負担)とします。現在、国の文教予算は約5兆円ですが、地方財源や私費負担を含む教育支出全体では約20兆円に達します 。無償化により従来は家庭が負担していた授業料等を公費で賄うため、一時的に数兆円規模の国庫負担増が生じます 。しかし、人口減少で将来の児童・学生数は減っていくため生徒一人当たりのコスト増加は限定的です。また教育への公的投資は人材育成による将来の経済発展効果も期待でき、必要経費と考えます。
  • デジタル教育インフラと効率化: 教育無償化による費用増は、デジタル技術の活用による効率化効果で相殺します。全国統一のオンライン教材プラットフォームを整備し、AIを用いた個別学習支援を導入することで、地域差なく質の高い教育を低コストで提供します 。例えば、人手のかかる一斉授業を一部オンライン化して教師1人当たりの指導可能人数を拡大し、また電子教材で教科書や印刷物コストの削減を図ります。地方と都市部の教育格差も、リモート授業やAI教材によって解消し、都市部の優秀な教師の授業を全国どこでも受けられるようにします 。
  • 学校統廃合と規模の経済: 少子化で余剰が出ている学校施設は統廃合を進め、適正規模の学校に再編します 。これにより施設維持費や管理コストを削減しつつ、生徒数減に対応して教育の質を維持します。統合による規模の経済で1~2兆円程度のコスト削減効果が見込まれており 、無償化による追加費用の大部分を吸収できる計算です。試算では2030年時点で無償化による増加費用と効率化による減少分がほぼプラスマイナスゼロで見合い、以降は効率化メリットが上回るとされています 。
  • 人的資本への投資強化: 教育無償化は単に授業料を無料にするだけでなく、国民のリスキリング(学び直し)やデジタル人材育成への投資も含みます 。具体的には、社会人がいつでも最新スキルを学べるオンライン講座の整備、AI時代に必要なリテラシー教育を義務教育から充実させる、といった施策です 。CDBSでは、浮いた行政コストや増大する税収の一部を**人への投資(Education and Training)**に振り向け、長期的な国家競争力の強化と国民の所得向上を図ります 。

社会インフラ分野の設計と予算(交通・通信インフラの最適化)

  • 国家戦略によるインフラ投資の一元化: CDBSでは都道府県・市町村の枠組みを超えて、インフラ整備を国の直轄戦略として一元管理します 。従来は各自治体が個別に計画していた道路・鉄道・通信網の投資を統合し、国全体で優先順位を付けて資源配分します 。具体的には、人口減少地域の過剰インフラ投資を縮小し、都市部や成長分野の必要投資に集中させます 。これにより、全国で見た公共投資総額を最適化し、インフラ関連歳出(年間20兆円超)の長期的な数兆円規模の圧縮が可能となります 。ただし防災対策や老朽インフラ更新は不可避なため、2030年までの短期では必要投資を維持しつつ重複や無駄のみ排除する計画です 。
  • スマートインフラと維持管理効率化: 限られた財源で持続可能なインフラを実現するため、スマート技術の活用と既存施設の統廃合を進めます。 例えば、老朽化した公共施設は統合・集約して管理コストを削減し、都市計画と連動したスマートシティ化でエネルギーや交通の効率運用を図ります 。また、民間の技術力を取り入れるPPP(Public Private Partnership)の活用や、次世代技術(自動運転車やIoTセンサーなど)と結びつけたインフラ高度化にも投資します 。特にAIによるインフラ点検・予防保全を導入し、橋梁や道路の損傷を早期発見・修繕することで、大規模な補修費用が発生する前に対処します 。これらの取り組みにより、安全性を確保しつつインフラ維持管理費の削減が可能となります。
  • 公共交通・通信の低負担提供: 基本インフラとして、地域間の情報格差是正や移動権の保障にも配慮します。例えば、最低限度のブロードバンド通信環境を全国民に確保し、遠隔地でも高速インターネットを低価格で利用できるよう国が支援します。また公共交通機関については、自治体の廃止代替バスや過疎地の交通を国が直接補助し、交通空白地帯をなくす施策を講じます。CDBSでは行政の中央集権化により地方交付税等が整理される分、国の直轄補助で全国均質なインフラサービスを低負担で享受できるよう予算配分します。

防衛分野の設計と予算(国防費の維持と集中管理)

  • 防衛予算の扱い: 防衛分野は従来通り中央政府の所管とし、CDBS体制でも国防費は国家予算から拠出します。地方自治の簡素化により、自衛隊や防災も含めた安全保障機能を国が一元的に担う形になります。日本の防衛費は近年増加傾向にあり、当初予算ベースで2022年度5.4兆円から23年度6.8兆円、24年度7.9兆円へと年1兆円規模で積み増しされています 。政府は2027年度までにGDP比2%(約10兆円規模)への増額を目標としており、安全保障環境の変化に対応するため一定の支出拡大は避けられません 。CDBSによる税制簡素化後も、この防衛費約5~10兆円超の予算枠を優先的に確保することが前提となります。決済税収はまずBIや社会保障に振り向けられますが、国家の存立基盤である安全保障にも必要な財源を充当し、将来的には効率化による削減余地が小さい分野として位置付けられます。防衛省の調達・人件費についても、AIやDXの活用で無駄削減には努めますが、基本的には現行方針を維持しつつ、安定財源による持続的な防衛力強化を図ります。

行政機構改革とコスト削減

  • 道州制的な行政再編: CDBSでは47都道府県・約1718市町村の廃止・再編を視野に入れた大胆な行政改革を行います 。具体的には、地方自治体を統合して国家直轄の広域行政ブロックを設け、地域行政サービスは国の出先機関が担う形に転換します 。市町村窓口は残しつつも、条例による独自施策は廃止し全国一律の行政サービス提供を徹底します 。これにより行政組織の重複を排し、地方交付税等で複雑に絡んでいた国と地方の財政関係も整理されます 。結果として、行政のスリム化と地域間格差の是正を同時に実現します。
  • AI行政と人件費圧縮: 行政サービスの立案・提供にはAIを全面活用し、業務効率と精度を飛躍的に高めます 。例えば、文書作成を生成AIで自動化し定型業務を省力化する、チャットボットで住民問い合わせに24時間対応する、大量のオープンデータをAI分析して政策効果をシミュレーションするといった具合です 。既に一部自治体で対話AIによる文書作成効率化の実証が始まっており、効果が報告されています 。国家規模でこれを導入すれば、定型的事務処理の大半は自動化され人員削減が可能になります 。地方公務員は約280万人いますが、行政統廃合とAI活用で少なくとも数十万人規模の削減が見込めます 。例えば全体の20%(約50万人)を削減すれば人件費ベースで年間2.5兆円の節約効果があります 。さらに地方議会の廃止による議員報酬や選挙経費の削減、公用施設の統合による維持費削減も加わります 。試算では行政機構改革と社会保障事務の簡素化により合計5兆円超のコスト圧縮が可能とされています 。削減された財源はBI給付やデジタル投資に再配分しつつ、職員の再配置により介護・育児など人手不足分野への労働移動も促します 。これにより**「小さな行政で大きな成果」を上げる財政構造**への転換を目指します 。

以上、justice.salonに記載されたCDBS構想を踏まえ、財政試算から各分野の制度設計まで詳細に検討しました。決済税によるシンプルで強力な財源確保のもと、BIで全国民の最低所得を保障し、医療・教育・インフラを無償または低負担で提供する本制度は、従来の複雑な税社会保障体系に代わる大胆な改革プランです。その実現には移行期の入念な設計と国民的合意形成が必要ですが、適切な調整を行えば財政的にも社会的にも持続可能な新モデルとなり得ることが試算から示唆されています 。日本が直面する少子高齢化・格差拡大・財政悪化という課題に対し、CDBS型社会制度はひとつの包括的ソリューションとなる可能性があり、さらなる研究と議論が期待されます。

参考文献: justice.salon掲載の関連ブログ記事・資料【6】【7】【8】【9】【11】【14】【17】(各リンク先を参照)

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