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UWEZ(統合福祉経済圏)構想は、日本の現行税制と行政を抜本的に再設計する大胆なビジョンです。所得税・法人税・消費税・住民税・相続税・社会保険料など複雑な多段の税制を全て廃止し、あらゆる支払い取引に対して一律10%の単一「決済税」を自動課税する仕組みに置き換えます。同時に、年金・生活保護・失業手当・児童手当など既存の社会給付を統合して全国民に定額を直接給付するベーシックインカム(BI)制度(月額例:成人10万円、未成年6.6万円)を導入し、さらに現行の都道府県・市区町村といった地方自治体を段階的に廃止してデジタル中央集権・AI行政へ移行します。地方議会や知事・市町村長といった二重行政の構造を無くし、立法・行政を国が一元管理する体制へ再編する構想です。以下では、このUWEZ構想を日本で実施した場合に期待される効果を、(1)行政コスト削減、(2)税務コスト削減、(3)財政再構成(税収一元化と再配分効率化)、(4)社会的インパクトの観点から定量的に分析します。

行政コスト削減

行政機構の簡素化による大幅なコスト削減が見込まれます。現在、日本の国家公務員と地方公務員を合わせた常勤職員数は約292万人にのぼり、その人件費だけで年間25.6兆円以上が支出されています。現行制度では国・都道府県・市区町村の三層構造のもと各自治体ごとに庁舎・議会・職員を抱える分権体制となっており、業務や施設の重複、自治体間で非互換な情報システムの存在などによる無駄や非効率が指摘されています。こうした縦割り・二重行政による行政運営コストの増大は、日本社会の持続可能性を損ねる一因となっています。

UWEZ構想のもとでは地方行政の統合とAI行政の導入によって、この巨大な行政コストの削減が可能となります。地方自治体が廃止されることで地方公務員の大半が不要となり、中央官庁もAIシステムの維持に必要な要員を残すのみで大幅に縮小されるため、中長期的には行政支出を劇的に圧縮できるとされています。実際、公務員人件費という歳出項目(約25.6兆円/年)については、業務の自動化と組織再編によってその相当部分を節約可能と試算されています。例えば電子政府先進国のエストニアでは、デジタル署名の普及によりGDP比約2%に相当する行政コストが節約できたとの報告があります。日本においても行政手続のオンライン化・効率化を徹底すれば、人件費や事務経費の数兆円規模の歳出カットが期待できると指摘されています。これは日本のGDP(約550兆円)の1~2%に匹敵する規模であり、年間で数兆円~十兆円規模の財政余力を生み出す可能性を示唆します。実際、UWEZ構想では行政のデジタル化によって行政コストを約7割削減し、行政手続に要する時間も現行比で95%削減することを目標に掲げています。庁舎維持費や地方議会の運営コストも不要になるため、これらも含めたトータルの政府運営コスト削減効果は極めて大きいと言えます。

削減によって創出された財政余力は、BI給付や医療・教育の無償化といった国民サービスの財源に充当したり、巨額の政府債務の圧縮に振り向けたりできるとされています。要するに、行政機構のスリム化とデジタル技術による効率化で同程度の財源でも遥かに高いサービスを提供可能となり、政府の生産性(コスト当たりパフォーマンス)は飛躍的に向上します。

税務コスト削減

単一税制による税務手続コストの大幅低減もUWEZ導入の重要な効果です。現行では複雑な税制・社会保険料制度に伴い、企業や個人は納税や各種給付申請のために膨大な時間と労力を費やしています。例えば中堅企業の場合、税務申告・納税のために年間128.5時間もの事務作業を要するとのデータもありますsantandertrade.com。また日本全国で8万人超の税理士(2023年3月末で80,692人)が登録されておりagaroot.jp、企業・個人は税理士への顧問料や申告手数料など多大な民間コストも支払っています。さらに国税庁には約5.6万人(令和4年度定員)の職員が配置されnta.go.jp、地方自治体にも住民税等の徴収事務要員が存在するなど、税の徴収・管理にも相当の人的資源が割かれています。

決済税への一本化により、税務手続の大部分が不要になります。納税はあらゆる取引時にシステムが即時に10%を天引き・徴収してくれるため、企業も個人も煩雑な税申告から解放されます。社会保険料の徴収も廃止され、労働者も年末調整や確定申告といった手続きをする必要がなくなります。実際、UWEZ導入下では企業や個人が税申告や給付申請に費やしていた時間・労力はゼロに近づき、確定申告そのものが不要になります。その結果、多くの企業にとって経理・納税業務が簡素化され税理士等への依頼も最小限で済むようになるため、民間での税務コンプライアンスコスト(金銭的コストと人的負担)は大幅に軽減されます。

行政側でも、徴税・社会保険料徴収や給付事務に割かれていた多数の職員を削減できます。税務署職員や地方税担当者の相当数が不要となり、これに伴う人件費削減効果も小さくありません。AIが正確かつ迅速に処理するため、ヒューマンエラー防止や納税漏れの防止にもつながります。まとめると、単一の決済税に移行することで税制運用コスト(徴税コストと納税コスト)の劇的な低下が実現し、企業活動の負担軽減や生産性向上、国民の利便性向上に寄与します。

財政再構成(税収一元化と再配分の効率化)

UWEZ構想の導入は、国と地方の財政構造を抜本的に再構成します。現在は国税と地方税が分かれ、税収格差を是正するため地方交付税交付金や各種補助金による再配分が行われていますが、その仕組みは複雑で非効率です。中央政府は毎年約16~17兆円規模の地方交付税を地方に交付しjstage.jst.go.jp、さらに社会保障やインフラなどの目的で多数の補助金を地方自治体に支出しています。一般会計ベースで見ると、地方自治体向け補助金等の総額は約19兆円(うち厚生労働省管轄分11.8兆円、文科省管轄分1.9兆円など)に達するとされますjri.co.jpjri.co.jp。これら地方交付税や補助金は、財源の地域間再配分を図る一方で、国から地方への資金流れを複雑にし、使途の制約や二重行政を生む一因ともなっています。

決済税による税収一元化と地方行政の廃止により、国・地方間の財政移転を大幅に簡素化できます。税収はすべて国にプールされ、そこから全国一律のサービス(BI給付や医療・教育無償化等)に充当されるため、地方ごとの財源格差を埋めるための煩雑な交付金制度は不要となります。地域ごとに異なっていた税収入と歳出を一本化することで、資金配分の効率化と透明化が期待できます。例えば従来は税収の少ない自治体ほど交付金に依存し、補助金獲得のために計画策定や申請事務に追われるといった非効率がありましたが、統合後はそうした無駄が解消されます。政府全体で見れば「国→地方→住民」という二段階の財政フローが「国→住民・サービス」という一段階に簡潔化されるため、行政内部の調整コストも削減されます。

さらに、税収の一元管理により財政運営の機動性・柔軟性も高まります。景気変動時や緊急時にも国が直接全国規模で財政出動・調整を行いやすくなり、地方ごとの財政状況に左右されず必要な支出を確保できます。また予算編成も重複なく一括的に行えるため、無駄な重複事業の整理やスケールメリットを生かした効率的な歳出が可能になります。地方自治体ごとに異なっていた行政サービス水準を全国で均一化し、地域間格差の是正にもつながります。要するに、「財布を一つにする」ことで総体としての財政効率を高めながら、再分配の公平性と透明性を向上させる効果が期待できます。

社会的インパクト(利便性・公平性・満足度の向上)

税・行政の簡素化は、国民の生活に様々な社会的メリットをもたらします。まず、確定申告不要の社会になることで、一般の人々は税務署や役所に出向いたり複雑な書類を書いたりする必要がなくなります。現在は会社員でも年末調整の書類提出があり、自営業者や副業所得のある人は確定申告が必要ですが、決済税ではそれらが原則不要になります。行政手続のオンライン化・自動化が徹底され、24時間365日いつでも各種申請・届出が完結するようになるため、市民は行政に煩わされず自分の生活に集中できるようになります。この「見えないくらいシームレスな行政サービス」は、究極的には人々が政府の存在を意識せずに済むほど利便性が高い状態であり、生活満足度の大きな向上につながります。

次に、公平性・透明性の向上も大きなインパクトです。税がフラットな単一率であらゆる取引に課され、給付は全国民共通に行われるため、制度が非常にシンプルで分かりやすくなります。国民全員が制度の仕組みを理解しやすく、「見える課税」によって納税者の政府への信頼も高まる可能性があります。税負担と給付の関係も明確になるため、「自分たちの払った税金がどのように再分配されているか」が実感しやすくなります。さらに、徴税・給付のプロセスが極限まで簡素化され全自動で行われることで、租税回避や不正受給の余地がなくなり制度の透明性・公正性が高まるとされています。AIによる厳格な管理の下、富裕層による抜け道的な節税や、必要のない人による給付の不正取得といった問題も最小化される見込みです。

また、BIによる普遍的なセーフティネットは社会の安心感を高めます。現行の選別的な給付制度では支給対象を絞る代わりに煩雑な所得審査や申請手続きが必要で、役所の事務負担も膨大になりがちであるうえ、「水際作戦」や申請漏れで本当に困っている人が支援からこぼれる懸念も指摘されます。その点、UWEZのように無条件・一律給付とすれば事務は自動化でき、行政コストが最小化できるだけでなく支援の漏れも防ぐことができます。全員に最低限の所得が保障されることで貧困や格差の是正につながり、公平で包摂的な社会が実現します。結果として国民の政府に対する満足度・信頼感が高まり、民主主義の質の向上にも寄与すると期待されています。

北欧諸国・エストニアとの比較

国際的に見ると、UWEZ構想は北欧型の高福祉社会モデルエストニア型の電子政府モデルを組み合わせたような独自のアプローチだと説明されています。以下に北欧諸国およびエストニアとの比較を示します。

  • 北欧諸国(高福祉・分権型): 北欧型モデルの特徴は「高負担高福祉」で、政府収入はGDP比約41%にも達します。累進課税による厚い所得再分配と、必要に応じた選別的給付(ターゲットを絞った福祉)が組み合わされており、地方自治体の自立性も高い分権型の行政運営が行われています。例えばスウェーデンやデンマークでは消費税(付加価値税)が25%と高率で所得税も累進課税が徹底されていますが、その財源で充実した社会保障や教育・医療サービスを提供し、地方政府も住民サービスに大きな役割を果たしています。北欧諸国は手厚い福祉と高い国民負担のバランスの上に成り立つモデルと言えます。
  • UWEZモデル(日本で導入した場合): UWEZが目指す「高福祉社会」という点では北欧モデルと理念を共有しますが、そのアプローチは大きく異なります。UWEZではフラットな単一課税+普遍的給付によって公平性を実現しようとする点で、累進課税+選別給付の北欧型とは対照的です。また地方分権ではなく中央集権化によって効率を追求するのも特徴です。税率そのものは10%と低率ですが、課税ベースを広くとることで必要な財源を確保します。事実、消費税10%による税収は年間約21兆円ですが、決済税10%はあらゆる支払いが対象となるため同じ10%でもより広い課税ベースを持ち、それを上回る税収が期待できるとされています。試算では、BI給付などに必要な追加財源約45兆円を決済税収で賄える見込みであり、従来型の税制で45兆円を賄うなら消費税率を20%以上に引き上げねばならないところ、決済税なら10%で極端な増税を回避できると試算されています。つまり北欧並みの厚い福祉を実現するために必要な財源規模を、税制の簡素化とICT活用による効率向上で捻出しようというのがUWEZの戦略と言えます。
  • エストニア(電子政府先進国): エストニアは人口130万人ほどの小国ながら世界でも最先端の電子政府を実現しており、その行政効率は模範的です。国民IDと電子署名制度により行政手続の99%以上がオンラインで完結し、納税申告ですら「オンラインで数分」で済むと言われます。エストニア政府の推計では、電子署名の導入だけで毎年GDPの約2%のコスト削減(金額換算で5億ユーロ規模)につながっているとされます。これは国全体で年間数百年分の労働時間に相当する業務を節約している計算です。UWEZ構想は、このエストニア並みの高度な行政効率を日本でも実現しようとするものです。行政デジタル化の遅れていた日本において、エストニアが示したような大胆なDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めれば、人手や時間にして莫大な無駄を省けることを示唆しています。実際、日本政府もデジタル化で行政手続の簡素化・迅速化を進める方針を掲げており、エストニアの成功例は一つのモデルケースとなっています。

総じて、UWEZ構想は**「北欧並みの充実した国民サービスを、エストニア並みの高度な行政効率で提供する」**ことを理想像としています。従来の延長線上にはないこの新モデルを導入できれば、日本においても数兆円単位の歳出削減や数億時間規模の業務効率化が可能となり、高福祉・高効率な社会の実現につながると期待されます。

Sources:

  1. 再生医療ネットワーク『統合福祉経済圏(UWEZ)構想』プレゼンテーションsantandertrade.comagaroot.jpnta.go.jp
  2. 総務省「国と地方の公務員数・人件費」(公務員給与実態調査)
  3. OECD『日本経済審査報告書2023』
  4. 世界銀行「Doing Business」(2019) santandertrade.com
  5. 日本税理士会連合会「税理士登録者数の推移」(2023)agaroot.jp
  6. 財務省「令和元年度地方交付税総額」jstage.jst.go.jp
  7. 日本総研『補助金削減論議の深化に向けて』(2021)jri.co.jpjri.co.jp

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